12月の料理

 蕎麦彩宴の出前を行う、みしま蕎麦組十人衆。今回はそのうちの三名にご協力いただいて蕎麦彩宴の様子とともに料理を紹介していく。

 みしま蕎麦組では道具立てや器なども三島産のものを用いて宴を演出する。まずは御酒(桐娘)とこづゆ、八寸が桐の盆に載せられ、宴は始まる。
(時季によってメニューには変更あり)

蕎麦彩宴
【御酒一献】


>>桐娘

 
 三島の米だけを使って醸造した日本酒。この桐娘はその名の通り、地元三島の人のために作られた純米酒。まさにこの土地でしかいただけない味だ。甘味があるがさらっとした飲み口、ふわっと広がる米の味。冷酒だと本当にスイスイと飲めてしまう、上品な食前酒だ。

八寸

菊のクルミ和え


>> 菊のクルミ和え

 
 食用の菊のシャクシャク感とトロッとしたクルミのペーストの調和が素晴らしい。始まった宴に心躍らせつつ、桐娘とともに味わうとうまさ倍増。


>> 打ち豆とにんじんの煮付け

 
 冬の食べ物である打ち豆だが、豆をつぶして打ち豆にするのは年内だけ。新年にはこの作業は行わない。なぜなら豆には「マメに働く」という意味が込められているから。この豆を自宅の畑で採れたにんじんとともに含め煮にする。すると…豆の甘味とにんじんの甘味のコントラストが抜群! なのである。薄口醤油とみりんだけで炊いたシンプルなものだが、何しろにんじん自体が甘い。はぐはぐといくらでも食べてしまいそうなおいしさ…たまらない。

そば寒天


>> そば寒天

 
 栄養満点の蕎麦湯にさらにそば粉を混ぜ、寒天で固めた一品。噛むというよりは“舌でなぞる”と、より一層おいしく味わえる。そばの香り満点で、歯ごたえたっぷりの手打ちそばとはまた違った食感と味が楽しめる。じゅうねん味噌でいただくも良し、醤油でいただくも良し。

 飲み口の良い桐娘や、思わずおかわりを申し出てしまう心づくしの料理の数々に、すっかりほろ酔い気分。そんな中、行われるのが蕎麦口上。今回の口上師は小柴直哉(62歳)さん。口上の後に受けが入り、彩宴は佳境を迎える。

「東西東西と鳴物をとめおきまして〜」と約3分の口上に乗せて登場してきたのは水蕎麦。

 
蕎麦点心


>> 水蕎麦

 一口分の水蕎麦。その名の通り、水の中に入っている蕎麦を食べる。蕎麦はもちろんのこと、水にも自信があるからこそ出せる品だ。この水ももちろん地元の清水。「ズズズッ」っと一気に口に含む。しっかりとしたコシのあるそばを噛むと、「これが蕎麦だぞ!」という風味が口の中に広がり、鼻から抜けていくのを感じる。

 


>> ざる蕎麦

 水切れの良さには定評があるマタタビのざる。このざるに盛られたゆでたての蕎麦を、その水が切れてしまわぬうちに食す。「音を立てて食べるのが本式だから、どんどん音を立ててください」という組頭・小平兼嗣さんの言葉を実践する。なるほど、本当においしさが増すではないか。そば粉100%で、つなぎは一切使わない蕎麦。味はしっかりしていても、決して蕎麦の味を邪魔しないカツオ節でダシを取っためんつゆ。しかもゆでたてときている。これがおいしくないはずがない。
 
彩宴の参加者が次々とおかわりを頼む。「今年一番のうまさだ」。そんな声も聞こえてくる。
 
大根の酢漬けと白玉小豆


>> 大根の酢漬け

 大根を酢漬けにしたもの。味と色の決め手はビーツという赤いカブ。ビーツと一緒に漬けることで大根も美しいピンクに染まる。
 パリポリという大根の食感と、それに比べるとちょっとだけフニュッとしたカブの食感。そして箸が止まらなくなる絶妙の酢加減。腹八分目にするのは難しい。


>> 白玉小豆

 垢抜けた甘さの粒あん。その甘さを受け止める白玉。どうしてこう甘いモノは別腹に入ってしまうのだろう。でもおいしいモノを食べている時はそんなことを思うまい。ただひたすら幸せをかみしめていただくのが一番だ。たとえその後に後悔することになったとしても!?

 
蕎麦彩宴

 こうして心づくしの宴は終了する。
…最後に出された蕎麦湯を飲みながら改めて思った。
「料理とは目で見、舌で味わい、耳で楽しむものなんだな」

 
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