9月の料理
 
夏野菜が毎日食卓に上るようになった。
奥会津のほとんどの家庭では自家用の畑作をしていて、
ナス、トマト、キュウリをはじめとして、畑は様々な野菜で溢れかえる。
とりたての新鮮な香りは、それだけでごちそうだ。
棒タラとエゴ


>>棒タラとエゴ

 
 これがないとお祭りの気がしない、と小柴さん。包丁では切れないほど大きくてカチカチの棒タラは水で戻した後、砂糖だけを入れて動かさずに煮る。身がやわらかくなったらしょう油とみりんで味つけ。煮汁は残しておくべし。2月に紹介したエゴと併せて秋祭りには欠かせないメニュー。海から遠く、魚は干物でしか手に入らなかった会津の地では、これが何よりのごちそうだった。そしてこの料理ができあがると、豊年予祝の秋祭りが始まるのである。

 

煮物


>> 煮物

 
 大根・にんじん・じゃがいも・里芋・昆布・しいたけ・高野豆腐・笹かま・ちくわ・たけのこ・こんにゃく・ニシン・にぼし…まさに器の中が祭りのにぎわいである。何とも素朴な味つけからしみ出してくる秋の香り。大人数でつつきたい気分になる。
と、その時お孫さんからの電話が。
「来ないの? お祭りだよー」

 
餅と餅のこ漬け


>> 餅と餅のこ

 自家製もち米で作った弾力があってきめが細かい餅は、アンコ・きなこ・納豆の三種類。餅の上でぴかぴか輝くアンコは小豆をこしてザラメを加える。正月や盆、早苗饗(さなぶり=ルビ)の時に作って保存しておくのだという。納豆餅には大根おろしを添えるのが祭りバージョン。そしてこの餅に必ず添えられるのが秋色をした汁、餅のこ。「餅のこ」とは短冊を意味するそうで、具材の里芋や大根、焼き豆腐などはすべて短冊切りになっている。それを煮干で取っただし汁の中に入れ、しょう油で味つけ。このやさしい味の汁を吸い込んだ餅が、腹の中でプクーっとふくらんでいくのは快感。

 
天ぷら


>> 天ぷら

 「食材はいくらでもあっから。」と家庭菜園で採れた野菜をさっと揚げる。さつまいも・ししとう・ナス・かぼちゃ・しその天ぷらが皿に盛られる。愛情込めて作られた野菜たちが衣の下から舌の上に顔を出す。しょう油や天つゆをつけなくても美味なのは、素材がいいからに他ならない。
「食べたいものを蒔くと食べられるのは楽しいね」
そう言って笑う小柴さんの笑顔が印象的だ。
 
そうめんかぼちゃの漬物


>> そうめんかぼちゃの漬物

 この不思議なネーミングは、このかぼちゃを煮るとそうめんのように広がるから。縦長で白っぽいこのかぼちゃを切って、みりん・しょう油・塩・若干の化学調味料を混ぜたものに一晩漬けておくと、この漬物は完成する。歯ざわりはパリパリとしていて、心地よい音が耳を刺激する。が、噛んでいくうちにその身はほぐした貝柱のようになってしまう。この食感が何とも楽しい。ただし、この感触を味わうには切る時にある程度の厚みをもたせなければならないのでご注意を。

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