5月の料理

 昭和村の郷土料理伝承グループ「五月会」は、五十嵐サツキさんを中心にしたばぁさま料理人六人衆。平均年齢約70歳。昔ながらの料理を残したいと、頼まれれば遠く草加市の市民祭りへも出向く。そしてついでに歌なども歌ってしまう。
 底抜けのあたたかさと陽気さを最高の調味料に、舌鼓のあとに思わず涙が溢れてくるような、忘れ難い味を生む達人たち。
 春の山菜を素材にした。

 
よもぎばんでぇ


>>よもぎばんでぇ

 うるち米を蒸して洗い、もう一度蒸してよく搗き、よもぎを混ぜ込む。
 漉し餡をのせて食す。
 よもぎを入れない「ばんでぇ餅」は、ごまだれをつけて軽く炭火で焼いたもので五月会の定番料理。いずれもきめがこまかく、しっかりした歯ごたえが身上の餅だんご。

 昔、といってもついこのあいだまで、「ばんでぇ餅」は山仕事の現場で当たり前に作られていた。
春先や秋の山は寒い。昼の弁当は冷え切ってぽろぽろに固くなってしまう。
「今日はばんでぇ餅にすっかぁ。」
 男たちは木の切り株(板台)に冷えた飯をのせて、ヨキ(斧)の背で飯をねばりが出るまで叩いてつぶし、丸めて味噌をつけ、暖をとるための焚き火で焼いてアツアツを食べた。
 木こりの食事だ。
 山林の仕事がある地域には、必ずばんでぇ餅があるという。

 

あわ入り笹巻き


>> あわ入り笹巻き

  (写真 三角に巻いた笹巻き、お膳に載っている)
 乾燥保存しておいた笹を茹で戻して尖塔形に丸め、洗ったもち米とあわを詰めて形を整え、スゲ草で縛って一時間ほど茹でる。きなこをつけて食す。
 笹の香りが移ったふっくらとした三角形は、食べてしまうのが惜しいほどに美しい。

 ふだんは田んぼ仕事の小昼(おやつ)に大量に作っておくものなので、貴重なもち米を少なくする為にあわを半量ほど混ぜる。節句などのハレの日は、真っ白なもち米の笹巻きにする。
 乾燥した笹の葉は防腐効果があって一週間は日持ちする。生の笹の葉は色は美しいが日持ちしないという。

 

山菜惣菜
>> 山菜惣菜

● トウが立ったふきのとうの油炒め(写真左下)
 ふきのとうは大きくなると2,30センチほどに伸びる。花が開く前の茎はまだやわらかで、葉をおろしてゆがき、油で炒めて味付けすると、香り高い逸品となる。

● こごみのおひたし(写真右下)
 こごみは羊歯植物で、葉を広げる前の一瞬をとらえて摘む。
 クセがなく、わずかなぬめりのある歯ごたえが爽やかだ。

● 白干し大根と山椒の酢の物(写真中央)
 千切りして乾燥させておいた大根を戻して、山椒の芽とニシンの薄切りを加えて三杯酢で和える。
 春の野良仕事は多忙を極めるので、朝、干し大根を水に漬けておき、野から摘んできた山椒の芽を香り付けにして簡 単に出来上がるので重宝される料理。
 この一品で晩酌も進む。

● ウドのジュウネン和え(写真左上)
 アクの強いウドは、香りも強い。
ごまの代用であるジュウネンを摺った味噌で和えると、実にまろやかだ。
 昔、氏神さまがごまの葉で目を突いて怪我をした故事から、昭和村の大芦地区では、ごまを作るのは今もタブーとされている。代わりにジュウネンを多用するが、むしろごまよりも香ばしい。

● イラのおひたし(写真右上)
 深山イラクサは山奥に行かないと採れない。
葉も茎も棘の覆われているので表皮を剥くのに一苦労するが、味は絶品。
 クセがなくつるりとした食感は、一度食するとやみつきになる。

 
からむしだんご


>> からむしだんご

 栽培作物の「からむし」の葉を乾燥させて、だんごに混ぜ込み、醤油やきなこをつけて食する。
 独特の香りを楽しむためには、醤油が適しているようだ。

 昭和村で古くから栽培されてきた「からむし」は、貴重な織物の素材として名高い。
 5月の小満の日に、からむし畑の焼畑が行われるが、それまでにとりわけ太く伸びた苗を摘み取ると、素性のよいからむしが生育する。
 摘み取ったからむしも、塩漬けや乾燥させて保存すると食用にもなる。

 
焼き豆腐の山椒味噌


>> 焼き豆腐の山椒味噌

 木綿豆腐を薄めに切って焼き、山椒味噌を載せて食す。
 もちろん、アツアツが美味しい。
 この時期、木の芽はいろいろな料理にふんだんに用いられる。家の周囲で容易に手に入るので、大きくならないうちにたくさん摘み取って軽く湯通しをし、冷凍保存して一年中使う。
 山椒味噌は、木の芽をよく擦って味噌に混ぜ込むだけなのだが、香りが損なわれず日持ちもするので、田楽や薬味に重宝される。
トップページ1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月商工会リンク掲示板

Copyright (C)2001 by OAF. All Rights Reserved