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>> 寒けぇ餅
小寒の日にこれを食べると風をひかないといわれている。
けぇ餅とは、掻き餅とも粥餅ともいわれて、かつては代用食だったが、つるりとした喉越しと共に蕎麦の香りが広がり、優しくて温かいものにふんわりと包まれたような懐かしさがある。
薬味と蕎麦滴れで食すのもいいが、じゅうねん味噌をのせて口に入れると、雲をちぎって食べているような不思議なときめきに驚く。
ある日村人が、隣村まで用を足しに出掛けた。晴れた朝で、この分なら昼までには着くと思われたのに、峠を越えたあたりで周り一面墨をべったり塗ったような闇夜になった。
どうしたことかとうろたえているうち、向いの原っぱがぼんやり光りだした。そっと近づいてみると、なんと森中の動物たちが集まって誰かを待っているようだ。
「宮内(くない)様んとこの猫様は、まだきゃんねぇなぁ。どうしゃったんだべ。」
熊、タヌキ、キツネにキジ、イタチもリスも伸び上がって心配していたところへ、息を切らして宮内様んとこの猫が現れた。
「遅くなっちまって申し訳ねぇ。今日の晩飯はけぇ餅でョ、熱くって熱くってやっと食ってきた。」
「そうか、けぇ餅では熱くて時間もかかるわナァ。間に合ってよかった。ホレ、みんな踊るべ」
〜ドンドコドン、ドンドコドン、チトシャン、ピッピ〜
次第に強くなる光の中で、動物たちは楽しそうに踊り続けた。
村人のその後は、また後日。
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